良導絡自律神経調整療法

まえがき

鍼灸は三千年の歴史を持っていますが、あらゆる面において主観的で複雑です。良導絡は客観的で科学的な根拠に立脚した新しい治療法を展開しています。今の社会が望んでいる医学だと言えます。昭和25年に創始者である故中谷義雄博士によって発見され、鍼灸医学の領域に科学的なEBMを導入し発展させてきました。その後は良線絡を研究する一門によって良導絡自律神経学会を設立し今日まで発展してきました。良導絡は皮膚の交感神経の反応点と機能を観察し、各臓器と関連する形態を見いだし、良導絡の系統的な理論体系と併せ治療法を構築してきました。
日常の生体は自律神経のネットワークによってバランスを保っています。交感神経の反応は、行動に向かつて体を準備する方向に働き、副交感神経は体を休養させる方向に働いている。脳内では末梢と違って、両神経の聞には厳密な区別はみられません。生体に病変、異常が生じますと自律神経の活動も乱れを生じます。不定愁訴に始まり体調の変化を生じ、情動の変化、記憶にまで変化を生じ、恒常性維持力が脆弱になってしまいます。自分の力で回復できない状態が自律神経失調ということになります。自律神経機能検査法は数十種類ありますが、いずれも単一臓器別であるため、全身の自律神経機能やバランスを総合的に評価できるものではありません。容易に臨床の治療に反映できる検査ではなく非臨床的といえます。薬物による自律神経系の治療も困難で効果もはっきりせず副作用も心配されます。全身の交感神経と副交感神経の皮膚への分布は交感神経系がはっきりしています。そこで皮膚から求めた24個所の良導反応点の計測結果は全身の交感神経の活動としてとらえて診断します。医療の臨床でも交感神経と副交感神経の両面の自律神経反応を観察し評価する方法はありません。血圧が168/88で脈拍が48の場合はどのように評価するのでしょうか。血圧が168/88は交感神経の緊張と捉え降圧薬を考える。脈拍が48では副交感神経の緊張と考える。いずれも片面の評価しかできません。不思議にも生体は片面からの治療でも両面のバランスが改善するような仕組みになっています。
このように、良導絡は経絡のみでなく、体表の交感神経の機能の評価と治療までおこなうことができます。今世紀が生み出したストレス社会の中で最も期待される治療法ということになります。良導絡は鍼灸の科学化とコンピュータ統計的な処理によって、生体のゆがみとして生じているツボも含め自律神経のバランスを測定し、診断から治療までの一体化を確立した科学的治療方法です。この治療効果は”点”から”面”さらには”立体的”な治療へと展開します。免疫現象というミクロな世界にまで生体は反応します。良導絡は皮膚表面に散在する交感神経のスイッチをON、OFFにする効果があり、この作用は隠れている副交感神経のバランスを引き出すように作用し、生体反応は恒常性に向かいます。生体を深く探るほどその仕組みは複雑で見えなくなりますが、このメカニズムの理解は日常の臨床から十分会得することができます。生体の複雑な反応に挑む科学手法としての良導絡治療は今後も躍進し発展を遂げるものと確信しています。論語にあるように「学則不固」は学べば学ぶほど奥が深いということです。患者の反応を見ながら治療している私たちは理屈抜きで楽しく治療を行っています。皆さんは、まず基礎編からしっかりと研鑽されることを希望いたします。

東京医科大学/名誉教授(麻酔科)
医療法人社団 医経会 武蔵野病院/院長
日本良導絡自律神経学会/会長
伊藤樹史

目次

まえがき
中谷義雄博士略歴
中谷義雄博士語録

第1章  良導絡の基礎理論
  1.神経の機能分類
    1)伝達方向からみた神経分類
       (1)遠心性神経
       (2)求心性神経
    2)自律神経
       (1)交感神経
       (2)副交感神経
  2.自律神経
    1)自律神経の概要
    2)自律神経系の化学的伝達と受容体
    3)良導絡自律神経調整療法と関係のある自律神経反射
    4)自律神経の作用と良導絡療法の作用機序
  3.西洋医学から捉える良導絡
    1)西洋医学検査
    2)西洋医学検査で異常が出なかった場合
    3)良導絡は西洋医学なのか東洋医学なのか
       (1)診断と証の違い
       (2)ECG (心電図)の場合
       (3)良導絡測定の場合
    4)良導絡測定の特徴
       (1)良導絡カルテ
       (2)症候群表
    5)診断と評価(アセスメント)・事前評価
    6)自律神経カルテ

第2章  良導絡自律神経調整療法の理論
  1.良導絡自律神経調整療法
  2.皮膚通電抵抗について
      (皮膚電気抵抗)
      (皮膚電気抵抗のメカニズム)
    1)皮膚電気抵抗の発生部位
    2)皮膚交感神経系
    3)良導絡測定結果にタイムラグがある理由
      (交感神経と皮膚通電抵抗)
  3.良導絡の基礎研究
    1)良導点とは
    2)反応良導点とは
    3)良導絡
      (1)定義
      (2)良導絡の名称
      (3)良導点の名称
      (4)良導絡の形態(良導絡図)
      (5)良導絡支絡
      (6)良導絡と経絡の相違点
      (7)良導絡の興奮性
      (8)代表測定点の実験
      (9)カルテの作成過程
  4.電気鍼について
      (直流電気鍼)
    1)直流電気鍼とは
    2)直流電気鍼の治療方法
    3)直流電気鍼を施すと身体内でどのような変化が起きるか
    4)直流電気鍼での電圧・電流・通電時間
    5)直流電気鍼の電気は身体のどこを流れるか
    6)パルス通電と直流電気の違い
  5.良導絡自律神経調整療法の治効機転
    1)一般作用と特殊作用
    2)内臓-皮膚反射、内臓-腹壁反射
    3)体表-体表反射
    4)まとめ
  6.良導絡治療の特徴
    1)全良導絡測定の結果
    2)反応良導点
    3)治療の面

第3章  良導絡測定
  1.ノイロメーターについて
    1)構造
    2)使用法
  2.良導絡測定の実際
    1)良導絡測定法
      (1)測定導子の準備
      (2)ノイロメーターのセットの方法
      (3)特殊な場合のセット法
      (4)全良導絡測定の実際
      (5)代表測定点の部位
        〈H良導絡の測定法〉
        〈F良導絡の測定法〉
      (6)測定時の注意事項
      (7)カルテの記入法
  3.良導絡カルテ
    1)生理的範囲と異常良導絡の求め方
      (1)異常良導絡とは
      (2)生理的範囲とは
      (3)生理的範囲の求め方
      (4)異常良導絡の求め方
      (5)興奮点・抑制点に印をつける
    3)まとめ
  4.カルテの見方
    1)平均電流量
    2)生理的範囲との関係
    3)良導絡症候群
    4)良導絡興奮性パターン
      (1)基本的パターン
      (2)応用パターン
    5)患者への説明
      (1)異常良導絡
      (2)患者への説明
      (3)不問診

第4章  良導絡自律神経調整療法
  1.良導絡治療(良導絡自律神経調整療法)とは
    1)全良導絡調整療法
    2)反応良導点治療
  2.全良導絡調整療法治療
    1)全良導絡調整療法における調整
      (1)興抑調整
        ①興抑調整方法
        ②刺激の方法
      (2)基本調整
        ①基本調整方法
    2)基本(調整)治療点と運用の仕方
      (1)全良導絡調整療法の調整方法
        ①施灸による調整
        ②刺鍼による調整
        ③EAP(Electrical Acupuncture)による調整
        ④圧粒子による調整
  3.反応良導点治療
    1)反応良導点治療の実際
    2)反応良導点の求め方
      (1)探索法
      (2)探索の仕方
      (3)探索上の注意
    3)反応良導点の処方
      (1)反応良導点の種類
        a.患部反応良導点
        b.反対側反応良導点
        c.誘導反応良導点
        d.背腰部反応良導点
        e.胸腹部反応良導点
        f.特効的反応良導点
    4)その他の治療点
    5)反応良導点刺激の方法
  4.刺激について
    1)刺激の定義
    2)刺激の種類
  5.刺激の方法
    1)ノイロメトリーからみる刺激方法
    2)鍼の響きと刺激効果
    3)刺激の強弱
    4)優れた刺激の条件

第5章  治療各論
  1.症状別反応良導点
  2.疾患別反応良導点

第6章  良導絡治療における注意事項
  1.治療における禁忌と非適応疾患
    1)一般禁忌部位
    2)禁忌症
    3)禁忌
    4)非適応疾患
  2.消毒について
  3.一般的注意事項
    1)基本的な注意事項
    2)治療前の注意事項
    3)治療中の注意事項
    4)治療後の注意事項

第7章  良導絡治療用機器と使用法
  1.自律神経調整鍼
    1)自律神経調整針の歴史
    2)自律神経調整針の構造
    3)針管の準備
    4)使用法
      (1)一般的な方法
      (2)置針法
  2.デイスポ型針管鍼
    1)デイスポ型針管鍼の特徴
    2)デイスポ型針管鍼の準備
    3)デイスポ型針管鍼を使った刺入と通電
    4)デイスポ型針管鍼を使用した(通電)治療における注意事項
      (1)強い切皮による刺入深度に注意
      (2)通電する場合には測定導子を接触させ陰極で通電を行う
      (3)通電する場合には、必ずインフォームド・コンセントをおこなう
  3.現在販売されている良導絡関連商品
    1)ノイロシステムビジョン(良導絡研究所)
      (1)機能
    2)その他の良導絡関連商品
      (1)自律神経調整針管(FR鍼管)「良導絡研究所」
      (2)デイスポ型針管鍼「大宝医科工業(株)」
      (3)ロイヤルエイト「良導絡研究所」
      (4)IW-ZEN「良導絡研究所」
      (5)ノイロソフター(DSー209)「良導絡研究所」
      (6)ノイロソフター(DSー208S)「良導絡研究所」
      (7)ノイロシステムビジョン「良導絡研究所」
      (8)CENT(セント)(600-GS)「良導絡研究所」
      (9)ハリマックス「良導絡研究所」
      (10)ノイロメーター解析ソフト(NAS)「クチコナ」
  4.ノイロメーターの故障の見つけ方
    1)メーターの針が充分に振れない
    2)全く針が振れない
    3)針は振れるが、フラフラと安定しない場合

第8章  良導絡Q&A(What is Ryodoraku?)
  1.良導絡Q&A

第9章  良導絡図・良導点
  1.良導絡図
  2.良導点一覧
  3.良導点番号索引

編集後記
参考文献
良導絡機器に関する問い合わせ先

編集後記

2006年につくば市でWHOの経穴部位標準化公式会議が開催され、経穴の部位決定がなされました。その結果を受けて東洋療法学校協会と日本理療科教員連盟は教科書編纂委員会を立ち上げ、2010年に経穴学の教科書として「新版
経絡経穴概論」が発行され、骨度法の寸度の変更、部位の変更、経穴の表記の変更がおこなわれました。また、その教科書のなかには、経絡の概念と現代科学的研究のなかで、経穴現象の電気的特徴として「皮膚の電気特性を利用して、経穴部位と関連を見つける試みがなされている。中谷義雄が提唱した良導絡、良導点、石川太刀雄が提唱した皮電点はともに皮膚通電抵抗が低下する現象が交感神経を介した反応により出現するもので、経絡経穴の現代科学的な解釈として用いられているが、客観的証明には至っていない。」と紹介されています。
本学会の教科書でもある「良導絡自律神経調整療法 基礎編」は1993年に第1版が発行されまもなく19年になりますが、これまで6回にわたり小さな改訂がされてきました。 そこで今回は、時代の変化に伴って、良導絡の基礎理論の解説、直流電気鍼とは、良導絡自律神経調整療法の治癒機転、良導絡治療の特徴などを充実させました。さらに良導絡測定器の進歩により、販売されなくなった機器を使った説明を、実際に販売されている機器を使った説明に変え、また、新たにディスポ型針管鍼の使用方法、刺入方法、通電・刺激方法などについて写真なども加えてやさしく解りやすい解説を加えました。
また、経穴部位の改訂も含めて経穴の表記方法を検討し、新しい経穴学を学んだものにもわかり易くするために新しい経穴名も併記することになりました。 さらに、本の大きさもA4判に変更し、ぺ一ジ数も約3割とかなり増加させ、初心者にもよりわかり易すいように順序を工夫し、今回の大きな改訂となった次第です。
最後に今回の改訂においてご尽力賜った編集委員の先生に対して深く感謝致します。

吉備 登

ここに学術部では“良導絡治療基礎講座のテキスドを改訂し、時代に沿った新しい内容を盛り込んで『良導絡自律神経調整療法《基礎編》』として新たに発刊することになりました。1993年4月に初版を発刊し、以降6回の改訂を行ってきましたが、今回は内容の追加、校正を行い、より分かりやすいテキストとして、多くの良導絡治療を行う同志に活用していただくことに重点をおいて、第7版を発刊することになりました。
特に「良導絡基礎理論」を加える必要をかねがね考えていましたが、なぜに良導絡測定は西洋医学検査が確立した現在も支持されるのかについて、また自律神経の必要最低限の知識を各先生方の協力でまとめてみました。これを伊藤樹史会長に確認していただき、「自律神経カルテ」を毎回活用するようにご指導いただきました。このテキストが役立つことを願っております。
編集を重ねて更に内容を充実できるよう今後も検討をすすめたいとおもます。また編集にあたりご協力いただいた、伊藤樹史会長、基礎編編集委員会の福地 孝、後藤公哉、森川和宥、小田博久、加藤信也、橋口 修、各先生がたと吉備登副会長、武内哲郎編集部長に対して感謝の意を表します。

2012年4月 学術部長 桑原俊之

参考文献

編集委員長

桑原俊之(学術部長)

編集委員

後藤公哉(副会長)・吉備 登(副会長)・武内哲郎(編集部長)・遠藤 宏(総務部長)・内田輝和(広報部長)・森川和宥(測定アドバイザー委員長)・北村 智(常任理事)

発行

日本良導絡自律神経学会 学術部
〒590-0482 大阪府泉南郡熊取町若葉2丁目11番1号
関西医療大学内

改訂歴

1993年 4月1日 第1版第1刷発行 ・ 1995年 10月1日 第2版発行 ・ 1999年 9月9日 第3版発行 ・ 2002年 3月1日 第4版発行 ・ 2005年 3月1日 第5版発行 ・ 2008年 4月1日 第6版発行 ・ 2012年 4月10日 第7版発行

印刷

図書出版浪速社 〒540-0037 大阪市中央区内平野町2-2-7 電話:06-6942-5032, FAX: 06-6943-1346 ※本書を無断で複写することは著作権法で禁止されていまず。

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