私の医療従事者としてのスタートは、臨床検査技師として病院に勤務したことでした。エコー検査などの検査で患者さんの悪いところを見つけなければならないと悪戦苦闘の毎日でした。また、当直も多く、ストレスで急性糸球体腎炎になり入院したことがあります。危うく人工透析になる寸前でした。その前段階で疲労やめまいがありましたが、その時点では異常値としては出ることがありませんでした。自分が臨床検査技師なのに「人工透析になるす前までわからないとは」と、自分の仕事に自信が持てず、患者さんに申し訳なく思っていました。たとえば、心筋梗塞とか脳卒中などの疾患は、検査で異常値と出た時点で重篤な結果になることがあります。検査で異常値が出ないから安心とは限らないわけです。糸球体腎炎で入院中にベッドの中で一日中、検査値に出にくい不定愁訴を捉えるにはどうしたら良いかと考えていました。その時に外科の先生が見舞いに来て、「君が好きそうな本じゃないかと思い、持ってきてあげたよ」と、褐色の汚れた「医事新報」という本を手渡されました。その本の中身は、今までの私の概念を打ち破るような内容でした。今まで悩んでいたことが一気に解決できるような気がしました。それには、中谷義雄先生が「良導絡自律神経」という理論を書いておられました。「経絡」という鍼灸の概念について西洋医学を熟知した日本の医師が、「自律神経」という概念で説明していたのです。この時に、私が次に何をすべきか方向が定まりました。西洋医学の検査で異常がないけれども、苦しんでいる患者さんが多くいる。この患者さんへ応えていきたいという努力が始まったのです。
自分自身、自律神経失調症に苦しんだこともあります。そのときの経験からアロマテラピーも取り入れました。その中で、良導絡治療の効果も体験しました。また、良導絡治療を学ぶうちに他にいろいろな治療法も見えてきました。多くのセラピストと出合ううちに良導絡の重要性を痛感するようになりました。今後インターネットなどの情報世界が進む中で患者さんの医療に対する意識は大きく変わってきています。統合医学が進む中で我々は他のセラピスト達のフレームワーク(概念)を学ぶ事も必要となってくるでしょう。しかし、その弊害もある事を学び、患者さんに説明する事も大切な役割となるでしょう。伝統医学やその他のセラピストたちの最終的治癒効果は?と聞くと、その多くは自律神経の安定にあると答えています。この事は中谷先生が、以前から言い続けてきたことであり良導絡の基本的概念です。今後、東洋医学をはじめ、あらゆるジャンルのセラピストを目指す人達は良導絡理論を学ぶ事も必要となるでしょう。統合医療といわれ、患者さんを全身で診る医療が今後多くなります。良導絡概念は東洋医学が行う西洋医学的アプローチとして重要な役割を持っていると確信しています。
平成21年8月吉日
橋口 修
はじめに
第1章 「体の調子が悪い」がわかる
第2章 良導絡と自律神経失調症
第3章 良導絡で自律神経失調症を調整する!
第4章 アロマテラピーで心と体をケアする
第5章 体質を変える漢方療法と食事
第6章 その他の東洋医学で自律神経を整える