私は長年にわたり、西洋医学の治療と並行して良導絡治療(良導絡自律神経調整法)を行ってきました。良導絡治療とは、電気針などによって自律神経を調整する理学療法で、故中谷義雄先生(医学博士)が創始されたものです。良導絡治療は、東洋医学や鍼灸治療を知らない私たち医師でも手軽に日々の診療に取り入れることができ、しかも幅広い症状に効果があります。本来の自己治癒力を高める治療なので、西洋医学が効きにくい症状に対しても確実に効果を発揮します。
医療の世界では、とかく最先端の医療に目が向けられがちです。しかし、患者さんと身近に接している私たち医師にとっては、日常のありふれた病気や痛みを治すことが最優先されます。そのとき、良導絡治療が大きな力になってくれます。西洋医学的治療に限界を感じたとき、私は何度も良導絡治療に助けられてきました。西洋医学を補完するものとして、これほどすぐれた医療はないと思っています。良導絡治療は副作用がなく、きわめて体に安全な治療です。したがって赤ちゃんからお年寄りまで、安心して治療を受けることができます。それは、私たち医師にとっても、安心して患者さんに提供できる医療であるということです。しかも、これだけで患者さんの全身状態を把握でき、調整もできるのです。ホリスティック(全人的)医療が見直されている現在、良導絡治療は現代医療に欠かせないものと信じております。
中谷先生がご存命の頃、良導絡治療は大いに注目を浴びました。良導絡治療に関心を寄せる医師も多く、国内はもとより海外にも広く良導絡治療が普及しました。ところがいま、医療の現場から良導絡治療が急速に影をひそめつつあります。良導絡に対する若い医師の関心が薄れ、それを日々の治療に生かそうとする医療関係者も減っています。良導絡治療に携わってきた者にとって、それは本当に残念なことです。残された私たちは、良導絡治療の灯を絶やさず、もっと大きな医療に育てる責任があります。そのための努力を惜しんではならないと思います。
本書は、私がこれまで行ってきた良導絡治療の集大成としてまとめたものです。一般の方々だけでなく、医療関係者にも良導絡治療を知っていただくために、治療の仕方にも触れました。本書が、良導絡治療への理解を深める一助になることを願ってやみません。
平成22年7月吉日
著者
はじめに
プロローグ —私の良導絡治療の歴史
第I部. 体に優しい全身療法・良導絡治療とは
第II部. 良導絡治療の実際
第III部. 全身の疾患に効く症状別良導絡治療